「看護助手に興味はあるけれど、自分にできるか不安」
「資格がない私でも働けるのかな」
看護助手の仕事が気になっているものの、不安が大きく1歩を踏み出せない方は少なくありません。
本記事では、元・製菓業界で働いていた方が、完全未経験から看護助手へ転職し、7年以上にわたって現場で感じたリアルな体験談をご紹介します。

- 氏名:ぴた
- 資格:介護福祉士
- 看護助手経験:9年
- 経験した病棟:内科・整形外科
- ブログ:ぴたらいふ(https://pita-life.com/)を運営


母のひとことが転機となった看護助手を目指した理由
私が看護助手になったきっかけは、看護師として働いている母の、何気ないひとことでした。
もともと私はものづくりが好きだったので、高校卒業後は製菓の専門学校に進学し、卒業後はチョコレート専門のフランチャイズ店で働き始めました。
「学校で学んだことが活かせる!」と喜びを感じ、この職場で頑張ろうと意気込んでいたのですが、現実はそう甘くありませんでした。
朝から晩まで働き詰めで、休憩もほとんど取れず、水分補給もお客様が途切れた隙に一口、二口。すぐに現場に戻って接客や製造業務をこなす毎日。時には休日出勤もありました。
そんな生活を続けていたある日、ついに体調を崩してしまったのです。「このままじゃ体がもたないかも…」と感じ、思い切って退職し、実家に戻ることにしました。
しかし、次にやりたいことがすぐに見つかるわけでもなく、家でぼんやりと過ごす日々。
そんなある日、母が「資格がなくても病院で働ける看護助手って仕事ってあるんだよ。ちょっとやってみない?」と声をかけてくれました。
看護師である母の仕事についてはなんとなく知っていましたが、資格がなくても病院で働ける職業があるとは、このとき初めて知りました。
仕事内容を聞いてみると、なんだか介護っぽいな…と。「正直、私には無理かも」と思わず口に出してしまいましたが、母は笑って「そんなの、やってみないと分からないじゃない」と。
「たしかにそれもそうだな」と思い、とりあえずやってみようかなという軽い気持ちで始めたのが、看護助手としての第一歩です。
そんな中、実家から車で30分ほどの総合病院で看護助手の求人を発見しました。高校時代に通っていた地域で土地勘もあり、従業員専用のアパートもあるとのことで、通勤の不安もありませんでした。
「ここなら安心して働けそう」と思い、すぐに応募。ありがたいことに内定をいただき、看護助手としてのキャリアが始まりました。
総合病院とデイサービスを経験して見つけた自分に合う働き方
私はこれまでに、2つの病院で看護助手として働いた経験があります。
初めて働いたのは、療養型の総合病院でした。当時の私は「看護助手=病院勤務」というイメージが強く、自然と病院の求人ばかりをチェックしていました。
また、知らない土地で働くのは不安だったので、転職先は県内に絞って探すことにしました。
そして、「内科だけ」「整形外科だけ」といった専門病院よりも、いろいろな分野をバランスよく学べる“総合病院”で働きたいと思っていました。
求人の探し方は、ハローワークや転職サイトを利用。そんな中、実家から車で30分ほどの距離にある総合病院が看護助手を募集しているのを見つけ、「ここなら安心して働けそう!」とすぐに応募し、ありがたいことに内定をいただきました。
一度は最初の病院を辞め、デイサービスに転職した時期もありましたが、病院とデイサービスのギャップに慣れず、気持ちが落ち込むことも多くありました。
そんな日々の中で、「やっぱり私は病院のほうが合っている」と感じるようになり、再び病院勤務に戻ることを決意。今度は、専門学校時代に住んでいたエリアで就職先を探すことにしました。
さまざまな求人を見ている中で、住宅手当など福利厚生がしっかりしていて、さらに保育園が併設されている病院を発見し、「ここなら、将来家族が増えても安心して長く働けるかも」と思い、迷わず応募しました。
この病院も総合病院で、整形外科が中心の施設でした。看護助手として2つの病院を経験する中で、働く環境の大切さや、自分に合った職場選びのポイントが少しずつ見えてきたように思います。

療養病棟と整形外科のリアルな仕事内容
最初に配属されたのは、内科の療養型病棟でした。この病棟には、会話や歩行が難しい患者さんが多く入院されていました。
そのため、主な業務は、食事・入浴・排泄の介助。病院勤務も看護助手としての仕事も初めてだった私は、最初の頃は「どう接したらいいんだろう…」と戸惑うことばかりでした。
ある日、いつものように「失礼しますね」と声をかけながらオムツ交換をしていたときのこと。患者さんが目や口を小さく動かし、私に何かを伝えようとしているのに気づきました。
そして、小さな声で「ありがとう」と言ってくれたのです。その瞬間、胸が熱くなり、今でも忘れられないほど嬉しかったのを覚えています。
この出来事がきっかけで、「たとえ言葉が少なくても、気持ちは伝わるんだ」と思えるようになりました。
それ以来、反応が見えにくい患者さんにも「きっと聞いてくれている、感じてくれている」と信じて、毎回心を込めて声をかけ、丁寧に介助するよう心がけています。
もちろん、看護助手の仕事は良いことばかりではありません。正直に言うと、体への負担はかなり大きかったです。
寝たきりの方が多かったため、排泄介助や体位交換の回数が多く、それだけでもかなりの体力を使います。
また、勤務は3交代制だったので、たとえば早番で15時半に退勤したその日の深夜0時半から夜勤が始まる…というようなハードなスケジュールもあり、生活リズムを整えるのが大変でした。
2つ目の病院でも、基本的な業務内容は同じで、食事・入浴・排泄介助が中心です。ただし、勤務の時間帯や病棟の特徴によって、仕事内容には違いがあります。
私が担当していたのは整形外科の病棟で、手術を控えた患者さんや入退院の多い患者さんが中心。そのため、日中はとにかくバタバタしていました。
たとえば、病室の準備や退院後の片づけ、シーツ交換(全ベッド分!)などをこなすだけでも一日があっという間に過ぎていきます。
また、看護師からの指示はPHS(院内携帯)を通じて届きます。
- 入院患者の外来受診の付き添い
- 輸液や医療機器を薬局やME室へ取りに行く
- 透析患者さんの送迎
など、対応すべき業務は本当に多岐にわたります。
そんな中でも、やりがいを感じる瞬間はたくさんあります。
印象に残っているのは、入浴介助のときの出来事です。真夏は汗びっしょりになりながら介助しますが、患者さんに「お風呂に入れてくれてありがとう」と言われるだけで、疲れがスッと軽くなるんです。
お母さんのような患者さんに「あなたも入りなさい」なんて冗談を言われることもあって、私は「ありがとう。でも今は〇〇さんがゆっくり入ってくださいね。私はおうちでゆっくり入りますから」と返したりしていました。
そんな会話も、入浴介助の楽しみの一つです。
夜勤帯には、日中とはまた違った大変さがあります。オムツ交換や体位交換が中心の業務で、夜間に不穏になってしまう患者さんの対応も必要です。限られた人数でナースコールにも対応しながら、朝までの業務をこなさなければなりません。
それでも、無事に夜勤を終えたときには「今日も安全に終えられた」とホッとすると同時に、大きな達成感を得ることができました。

介護福祉士を目指した理由と受験勉強の体験談
介護福祉士の資格を取得したのは、整形外科の病院で働いていたときのことです。
看護助手として7年目に入った頃、介護福祉士として働いている義母が「そろそろ介護福祉士を目指してみたら?」と声をかけてくれたのがきっかけでした。
それまでも「いつか取れたらいいな」とは思っていたものの、なかなか行動に移せずにいましたが、現場経験も積み、実務経験3年以上という受験資格も満たしていたので、「そろそろ挑戦してみようかな」と思い、本格的に資格取得を目指すことにしました。
実務者研修は「三幸福祉カレッジ」で受講しました。通学スタイルで授業は土日中心でしたが、その当時、わが家には2歳の子どもがいました。
そこで支えてくれたのが、私の両親と夫のご両親です。私の実家は車で高速道路を使っても1時間半ほどかかる場所でしたが、それでも「頑張ってほしい」とわざわざ来てくれて、子どもの面倒を見てくれました。
実務者研修の約2か月間、義両親と両親のサポートのおかげで、安心して通うことができました。「家族の支えがあってこそ、ここまで来られたんだな」と、改めて感謝の気持ちでいっぱいになったのを覚えています。
一緒に講義を受けた仲間たちは、本当にさまざまな経歴の方ばかり。
未経験でこれから介護業界に挑戦する方、訪問介護で長年働いてきたベテランの方、介護老人保健施設やデイサービスで活躍している現役スタッフなど…。話を聞いているだけでもとても刺激を受けました。
講義内容はとても実践的で、普段の業務とつながることも多く、学びながら「これ、現場で使える!」と思うことがたくさんありました。
勉強方法については、特別なことはしていません。
- 研修で学んだ内容をその都度しっかり復習すること
- 市販の過去問題集を使って、ひたすら過去問を繰り返し解くこと。
この2つをコツコツ続けていっただけですが、おかげで無事に合格することができました。
大切なのは、「今の仕事とつなげて学ぶこと」と「毎日少しずつでも取り組むこと」なんだと思います。


患者のありがとうが看護助手のやりがい
看護助手として働く中で、やっぱり一番うれしい瞬間は、患者さんから「ありがとう」と言っていただけたときです。そのひとことを聞くだけで心があたたかくなって、「ああ、この仕事を選んでよかったな」と心から思えます。
特に印象に残っているのは、入院当初は寝たきりだった患者さんが、少しずつ元気になり、歩けるようになって、最後には笑顔で退院していく姿を見届けたとき。その背中を見送る瞬間は、毎回じーんと胸が熱くなります。
中には、会話を重ねるうちに仲良くなった患者さんが、退院時に「また会いに来るね」と笑って声をかけてくださることもあります。
そんなとき、私は決まって「もう来ちゃダメですよ、元気でいてくださいね」と冗談まじりに返すのが定番のやり取りです。笑い合いながら患者さんを見送る瞬間には、短い時間でもしっかり関われたことへの喜びを感じます。
また、お年寄りの患者さんとお話していると、昔の暮らしや戦後の話、若かりし頃の恋愛話まで聞かせていただくことがあります。
その一つひとつが鮮明で面白く、「えっ、それってドラマの話じゃなくて実話なんですか!?」と驚くようなエピソードもたくさんあります。
「お世話をする」だけでなく、「話を聞かせてもらう時間」も、看護助手の仕事の楽しさのひとつだと思います。
さらに、忙しい一日を看護師たちと声をかけ合いながら乗り越えたときの達成感は格別です。
「今日は本当に助かったよ」
「お疲れさま、ありがとう」
そんな言葉をかけ合える関係性があるからこそ、毎日頑張り続けることができています。
そして、自分でも気づかないうちに、少しずつ成長していることを実感できるのも嬉しい瞬間です。
看護助手は、患者さんにとってとても身近で、頼れる存在。
ある患者さんに「あなたは話しやすくて、つい不安なことを話したくなっちゃう。いつも話を聞いてくれてありがとうね」と言っていただいたことがあります。その言葉は今でも忘れられません。
「ただのサポート役」ではなく、患者さんの心に寄り添うケアができるのが、看護助手という仕事の本当の魅力なんだと感じた出来事でした。
また、看護師と一緒に仕事をする中で、自然と医療に関する知識や用語も身についていきます。処置の流れや病名、薬の名前など、最初はまったくわからなかったことも、毎日少しずつ理解できるようになりました。
この「毎日の小さな積み重ね」が、確実に自分の力になっていくのを実感できるのも、この仕事の面白さのひとつです。
看護助手という仕事は、体力も必要で、決して楽ではありません。でも、心が動く瞬間がたくさんあって、誰かの役に立てていることを実感できる、そんな仕事に出会えた私は、本当に幸せだと思っています。

体力・人間関係・認知度の壁など看護助手のリアルな苦労と本音
看護助手の仕事には、やりがいがある一方で、正直なところ大変なこともたくさんあります。
まず大きな負担となるのが、業務の重なりです。たとえば、患者さんを外来へ連れて行っている最中に、看護師から「至急、薬を取りに行ってほしい」と連絡が入ることもあります。
そのたびに優先順位を判断し、臨機応変に動かなければなりません。
日勤帯はとにかく忙しく、基本的にゆっくり座っていられる時間はほとんどありません。体力がないと、正直きついと感じることもあります。
一方で、夜勤帯はオムツ交換がメイン業務となるため、腰への負担が大きく、身体的な疲れがたまりやすいのも事実です。
また、3交代制勤務は生活リズムが乱れやすく、特に慣れるまでは本当につらかったです。「夜勤明けなのに眠れない」「体がだるい」と感じる日も少なくありませんでした。
人間関係についても、病棟は女性が多い職場なので、相性や雰囲気によっては人間関係に悩むこともあります。もちろんチームワークの良い職場もたくさんありますが、人によってはそれがストレスに感じることもあるかもしれません。
さらに、看護助手は看護師や患者さんだけでなく、クラーク、薬剤師、ME(医療機器の専門職)、作業療法士など、多職種の方と関わります。そのため、円滑なコミュニケーション能力が求められます。
そして、少し切ないエピソードもあります。看護助手という職業がまだあまり認知されていないため、患者さんの中には「病棟にいるのは看護師か先生だけ」と思っている方も多いのです。
ナースコールで呼ばれて訪室したときに、「点滴が終わったよ」と言われ、「では、看護師を呼んできますね」と答えると、「え?あなた看護師じゃないの?」と驚かれることもあります。
「違うんです」と笑顔でお伝えしつつも、少し寂しさを感じる瞬間です。
そんな大変なことがある中でも、この仕事を続けられているのは、やっぱり患者さんとの温かいやり取りや、日々の達成感があるから。
看護助手という仕事は、目立たない存在かもしれませんが、誰かの人生に寄り添うことのできる、大切な役割を担っていると感じています。

これから看護助手を目指す人へメッセージ
配属される病棟や施設によって多少の違いはありますが、看護助手の現場は慢性的な人手不足もあり、基本的にはとても忙しいです。
やることも多く、毎日がバタバタ。体力も気力も必要な、大変なお仕事だと思います。でも、そのぶん看護師や他のスタッフと協力して、1日を無事に終えられたときの達成感は本当に格別です。
そして何より、患者さんが少しずつ元気になっていく姿を間近で見られること。それが、この仕事の一番の喜びであり、大きなやりがいでもあります。
退院のとき、患者さんが笑顔で「ありがとう。お世話になりました」と声をかけてくださる瞬間には、心の底から「この仕事をしていてよかった」と思えます。
よく「資格がなくてもできる仕事」と言われることもありますが、私はそうは思いません。
患者さんに「ありがとう」と言っていただける看護助手になるには、ただ体を動かすだけではなく、相手の気持ちをくみ取る力や、あたたかい思いやり、そして丁寧なコミュニケーションが欠かせません。
だからこそ、これから看護助手を目指す方には、「心で寄り添えるケア」を大切にしてほしいと思います。
看護助手は、病院の中でもっとも患者さんに近い存在です。だからこそ、「ただ業務をこなす人」ではなく、「そばにいてくれる人」として、患者さんの心に寄り添える存在になってください。

