医療・福祉の仕事に興味を持っている人の中には「看護助手と介護士って何が違うの?」「どちらの方が自分に向いているの?」と疑問に思っている方が多いようです。
看護助手と介護士にはシフト制の働き方や役立つ資格等の共通点が多いものの、役割や待遇面などを含め、明確な相違点も多数あります。
本記事では、看護助手と介護士の違いや、それぞれの職種について向いている人の特徴を解説していきます。
看護助手と介護士は共通点が多い
看護助手と介護士は、仕事内容や役立つ資格など、共通点が多くあります。
ただし、働く場所や給料面など異なる部分も多数有るため、求める条件によって自分に向いている職種は異なるでしょう。
看護助手はその名のとおり看護師の助手であるため、基本的には看護師の指示に従って働くことになります。
一方で介護士の場合は、介護施設の中心的存在で、チームケアを率先して引っ張っていく姿勢が求められます。
本記事でも紹介しているそれぞれの職種の特徴や、それぞれに向いている人の特徴などを参考に、自分にあった職種を選んでください。
看護助手と介護士はどっちがいいのか?
看護助手と介護士はどちらがいいのか解説するにあたり、まずはそれぞれの違いや共通点を以下の比較表にまとめましたので、ご確認ください。
項目 | 看護助手 | 介護士 |
---|---|---|
仕事内容 | 主に看護師の業務をサポート 患者さんの入浴や排泄 食事介助など リネン交換やリハビリへの付き添いなど ※身体介助無しの職場も有り | ご利用者の日常生活のサポート ご利用者の入浴や排泄 食事介助など レクリエーションの企画や実施 ※基本的に身体介助有り |
勤務形態 | 夜勤を含むシフト制 | 夜勤を含むシフト制 |
働く場所 | 各種医療機関 病院 クリニック 等 | 高齢者施策や福祉施設 介護施設 障がい者施設 等 |
サービス対象者 | 入院患者 | 施設利用者 |
平均給与 | 平均月額給与:222,500円 平均賞与:513,600円 平均年収:3,183,600円 | 平均月額給与:282,400円 平均賞与:621,400円 平均年収:4,010,200円 |
必要な資格 | 特に無し | 特に無し |
役に立つ資格 | 介護職員初任者研修 介護福祉士実務者研修 介護福祉士 メディカルケアワーカー 看護助手実務能力認定試験 ※無資格でも勤務可能 | 介護職員初任者研修 介護福祉士実務者研修 介護福祉士 ケアマネージャー ※無資格でも勤務可能 |
参照:政府統計の総合窓口「職種(小分類)、年齢階級、経験年数階級別所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)
単純に給料面を重視して判断するのであれば、看護助手よりも介護士のほうが平均給与が高いため、介護士を選べばいいでしょう。
そのほかの点に関してはとくに大きな違いはないため、必ずしもどっちがいい等の正解はなく、自分にあった仕事を選ぶことが大切です。
それぞれの仕事内容や働く場所、給料の違いなどについて、以下の点について詳しく内容を解説していきます。
看護助手と介護士の役割の違いと共通点
看護助手と介護士では、求められる役割に違いがあります。
看護助手は基本的に「看護師のサポート」がメインです。そのため、率先して自分から動くよりも看護師の指示に従って仕事をする場面が多くなります。
看護助手は夜勤中でも、看護師に同行する形になるため、緊急時でも安心して仕事ができるメリットがあります。
一方、介護士の場合は介護施設での中心的存在になるため、自分で考えて仕事をすることが求められるでしょう。
チームケアの中心となり、ご利用者の生活を支えるため、やりがいを感じやすい点がメリットです。
看護助手と介護士の仕事内容の違いと共通点
看護助手と介護士の基本的な仕事内容は、ほぼ同じと考えて問題ありません。
たとえば、患者さんやご利用者に提供する日常生活のサポートは、どちらも以下のような業務です。
- 入浴介助
- 排泄介助
- 更衣介助
- 排泄介助
- 移乗介助
- リネン交換
- 外出の付き添い
ただし、看護助手の場合は、上記の中でも入浴や排泄などの身体介助をまったく行わない場合もあります。
職場によって仕事内容が異なることもあるため、看護助手として働く場合は、事前に仕事内容を確認して納得した上で働き始めましょう。
看護助手と介護士の働く場所の違いと共通点
看護助手と介護士の活躍が求められるのは、それぞれ以下のような場所です。
職種 | 働く場所 |
---|---|
看護助手 | 病院 クリニック 診療所 等 |
介護士 | 特別養護老人ホーム 介護老人保健施設 介護付き有料老人ホーム サービス付き高齢者向け住宅 認知症対応型共同生活介護 障がい者施設 等 |
看護助手が働く場所は、介護士が常駐していないような医療機関がメインです。
一方で、介護士の場合は特別養護老人ホームや介護付き有料老人ホームなどの、介護施設が主な活躍の場所になります。
看護助手と介護士のサービス対象者の違いと共通点
看護助手と介護士では、医療や介護のサービスを提供する対象者に違いがあります。
看護助手の場合は、病院やクリニックなどの医療機関で働くため、医療サービスの対象者は入院している患者さんです。年齢が若い障害を持った方もいれば、介護が必要な高齢者の方もいます。
これに対して介護士の場合は、介護施設で働く場合は其処で生活する高齢の要介護者がサービス対象者です。
ただ、病院で看護助手のサポートが必要な方は高齢の方が多いため、高齢者への介護業務をするという点で考えると、共通している部分もあります。
看護助手と介護士の給料の違いと共通点
看護助手と介護士の給料の違いを、ボーナスや年収なども含めてまとめたのでご覧ください。
職種 | 給与(月額) | ボーナス | 年収 |
---|---|---|---|
看護助手 | 222,500円 | 513,600円 | 3,183,600円 |
介護職員 | 282,400円 | 621,400円 | 4,010,200円 |
参照:政府統計の総合窓口「職種(小分類)、年齢階級、経験年数階級別所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)
看護師の補助役である看護助手と、介護施設のメイン職種である介護士とでは、給料面でもかなりの差があることが分かります。
具体的には、介護士のほうが月の給与が約6万円/月も多く、年収は約82万円高いという実績があります。
看護助手と介護士の資格の違いと共通点
看護助手も介護士も資格がなくても働くことは可能ですが、資格があることでキャリアアップに役立ちます。
以下のような介護業務に活かせる資格は、看護助手にも介護士にも役立つ資格です。
- 介護職員初任者研修
- 介護福祉士実務者研修
- 介護福祉士
看護助手の方に役立つ資格としては、メディカルケアワーカーや看護助手実務能力認定試験などがあります。
介護士の場合は、他職種へのキャリアチェンジとして、ケアマネージャーの資格がおすすめです。
ケアマネージャーの資格を取れる時点で、介護士としての経験も豊富になっています。そのため、介護福祉士とケアマネージャーの資格をアピールポイントに転職すれば、大きなキャリアアップにつながる可能性もあるでしょう。
看護助手の方が向いている人の特徴
看護助手のほうが向いている人の特徴は、以下のようなことが挙げられます。
それぞれ詳しく解説していきます。
病院等の医療機関で働きたい人
看護助手の働く場所は、病院やクリニックなどの医療機関です。
そのため、介護施設ではなく医療機関で働きたい人は看護助手がおすすめです。
看護助手は資格がなくても働き始められるため、資格も経験もない状態で医療機関に就職したいという方は、看護助手から始めてみるのもいいでしょう。
介護施設とは異なり、主に患者さんが退院するまでの過程をサポートする役割を担うため、医師や看護師などの医療を近くで支えたいという方は、ぜひ看護助手として働いてみてください。
病院で働きつつ国家資格の介護福祉士を取りたい人
病院等の医療機関では働きつつ、国家資格取得を目指したい人は、看護助手から始めてみるのもいいでしょう。
介護福祉士を受験するためには、身体介護を含む介護業務の実務経験が通算3年以上必要です。
看護助手は看護師のサポートとはいえ、患者さんの日常生活を支えるための介護業務は、介護の実務経験に含まれます。
ただ、職場によっては看護助手が身体介護を行わず、掃除やリネン交換などの生活支援のみ行う場合もあり、介護の実務経験に換算できない可能性もあります。
看護助手の経験を活かして介護福祉士を取りたい人は、事前に仕事内容を確認して、受験するための実務経験に含まれる内容か確認しておきましょう。
医療的なケアを学びたい人
医療的なケアを積極的に学びたい人は、看護助手の仕事に向いているかもしれません。
看護助手が医療機関は、介護士が働く介護施設よりも医療的なケアがメインのため、医師や看護師などの医療的なケアを身近に感じながら見て学べます。
ゆくゆくは看護師(正看護師・准看護師)を目指したいと考えている人には、特にオススメの職種といえます。
介護・福祉業界よりも医療業界のほうに関心が強い方は、医療機関で看護助手として働き始めることでキャリアの幅が広がるかもしれません。
介護士として介護施設で働いても、医療的なケアを学ぶ機会はありますが、やはり実際に患者に提供している医療を感じられるのは医療機関以外ないでしょう。
他人から指示されることに抵抗がない人
看護助手は基本的に、看護師の指示のもとで働きます。そのため、他人から指示されることに抵抗がある人は向いていません。
自分で考えるよりも誰かに指示されながら、常にサポート役に徹したいという方であれば、介護士よりも看護助手のほうがあっているといえるでしょう。
体力に自信がある人
看護助手は看護師のサポート業務とはいえ、患者さんの入浴や排泄、移乗介助など、体力を必要する仕事が多くあります。
そのため、体力に自信がない人は、仕事をしていく上で苦労するかもしれません。
求人によっては夜勤に入ることが必要なケースも有り、その場合は生活リズムも乱れやすいため、体力だけでなく体調管理能力も求められます。
資格や経験はとくになくても、体力に自信がある人は看護助手に向いているため、転職を検討してみるとよいでしょう。
介護士の方が向いている人の特徴
介護士のほうが向いている人の特徴は、以下のとおりです。
それぞれ具体的な内容を見ていきましょう。
高齢者介護の分野で働きたい人
高齢者介護の分野で働きたい人は、迷わず介護士を選びましょう。
介護士は高齢者介護の中心的存在で、業界を引っ張っていく姿勢が求められる職種です。
看護助手も同じような介護業務を行いますが、医療機関はあくまで医療サービスを提供する場で高齢者以外の方にも関わる場面が多くあります。
介護施設で介護士として働けば、高齢者介護の最先端で自ら率先して行動しなければいけないため、高齢者介護のスペシャリストとして成長していけるでしょう。
協調性がある人
介護士は介護サービスを提供する中心的存在で、チームケアをまとめる役割も求められます。
そのため、協調性を持って他の職種とこまめに連携しながら、質の高い介護サービスを提供していかなければいけません。
逆にあまり協調性がなく、与えられた仕事を淡々とこなしたいという方は、指示に従って仕事をする看護助手のほうが向いているといえるでしょう。
学生時代に部活や生徒会などの経験があり、協調性に自信がある方は、介護士の仕事に活かしていけるでしょう。
コミュニケーションが好きな人
介護士は、他の職種との連携はもちろん、ご利用者とも常にコミュニケーションを図る必要がある仕事です。
そのため、他人と関わりコミュニケーションを積極的にとるのが好きな人は、介護士に向いているでしょう。
コミュニケーションといっても自分から話す能力だけでなく、相手の話を聴く傾聴力も大切です。
介護施設で生活するご利用者は、話を聴いてもらいたい方も多くいます。
自分から話をするだけでなく、聞き上手でもある方は介護士としての才能があるといえるでしょう。
介護業界でキャリアアップしたい人
介護士は、介護リーダーをはじめ、ケアマネージャーや生活相談員、管理職などキャリアアップの選択肢が多いため、介護業界でキャリアアップしたい人におすすめです。
まずは現場の介護職として経験を積みながら、介護福祉士やケアマネージャーの資格を取得しましょう。
資格取得後は転職をすることで、今の職場にいるよりもキャリアアップの幅は広がります。
介護業界で確実にステップアップして、介護士からさらに上位の仕事にキャリアを積み上げたい方は、まずは介護士として働き始めましょう。
オンとオフの切り替えがうまい人
介護士は感情労働とも言われており、ご利用者と接する際に自分自身の感情を抑えながら働くことが求められます。
そのため、ストレスを抱えやすく、仕事の悩みを自宅に持ち帰ってしまう人よりも、オンとオフをうまく切り替えて割り切って働ける人が向いているでしょう。
また介護施設では、ご利用者が急に亡くなることもあり、精神的に大きな負担を感じる恐れもあります。
決して感情を捨てろというわけではありません。
ただ、ご利用者に情が移ってしまい、急変があった際に大きなストレスを感じるようであれば、介護士として長く働くのは大変かもしれません。
転職に有利なのは介護士
看護助手と介護士はどちらも求人倍率が高い職種です。
ですが、以下のような理由から、転職に有利なのは看護助手よりも介護士といえるでしょう。
同じような仕事内容ですが、医療福祉の現場で長く働き続けながら、なおかつキャリアアップを狙いたい人は介護士がおすすめです。
また、どちらの職種にも興味がある人の場合は、一度看護助手をやってみてから、経験を活かして介護士に転職するという選択も可能です。
それぞれの理由について、詳しく解説するので参考にしてください。
看護助手と介護士はどちらも求人倍率が高い
看護助手も介護士も、有効求人倍率は高く、厚生労働省の調査によると、それぞれの有効求人倍率は以下のとおりです。
職種 | 有効求人倍率 |
---|---|
看護助手 | 3.98 |
介護士 | 3.23 |
参照:job tag「看護助手」
参照:job tag「施設介護員」
またどちらも正規職員の割合も高く、看護助手でおよそ5割、介護士の場合はおよそ7割の人が正規職員として働いています。
どちらも転職しやすく、正規職員として採用されやすいため、他職種からの転職にも向いているでしょう。
ただし有効求人倍率が高いからといって、条件面が必ずしもいいというわけではないので注意しましょう。
介護士の方が求人の選択肢が多い
看護助手と介護士の有効求人倍率は、どちらも高くなっていますが、求人の選択肢の多さを考えると、介護士のほうが転職しやすいと言えます。
なぜなら、看護助手の働く場所は医療機関に限られ、病院やクリニック、診療所がメインで選択肢としては多くありません。
一方、介護士の求人であれば、以下のようにさまざまな介護施設から、自分にあった働く場所を選べます。
- 特別養護老人ホーム
- 介護老人保健施設
- 介護付き有料老人ホーム
- サービス付き高齢者向け住宅
- 認知症対応型共同生活介護
上記以外にも、訪問介護やデイサービスなど、夜勤がなく日勤のみで働ける介護事業所も選択肢として出てきます。
さまざまな施設形態から、自分にあった職場を選びたい方は、介護士のほうが働きやすいといえるでしょう。
介護士の方がキャリアアップを目指しやすい
看護助手よりも介護士のほうがキャリアアップの選択肢も豊富です。
看護助手の場合は、キャリアアップの選択肢がないわけではありません。しかし、病院内で看護助手から上位職種にキャリアアップする可能性が低いです。
介護士の場合は、介護施設で働きながら資格取得をしたり、役職などへの昇格を狙ったりすることで、以下のような仕事にキャリアアップできます。
- 介護リーダー
- ケアマネージャー
- 施設の管理職
- 生活相談員
- 法人のエリアマネージャー
介護士から始めて資格を取り、着実に経験を積んでいけば、リーダーから管理職、さらに上位職であるエリアマネージャーに昇格することも可能です。
エリアマネージャーまでキャリアアップできれば、給料面でも大きなメリットを感じられます。
長く介護業界で働きながらキャリアアップを視野に入れているのであれば、看護助手より介護士として働くほうがオススメといえるでしょう。
看護助手と介護士の違いまとめ
看護助手と介護士どっちがいいのか悩んでいる人は、それぞれの特徴やメリットなどを参考にした上で、自分にあった仕事を選びましょう。
看護助手は医療機関で働きたい人や、自分で考えるよりも誰かの指示に従って働きたい人などにおすすめです。
給料面やキャリアアップの選択肢の多さなどを考慮するのであれば、介護士がいいでしょう。
どちらを選んでも正解や不正解はなく、仕事が自分に向いているか考えたり、求める条件に当てはまっているか確認したりしながら、看護助手と介護士の中で自分にあった仕事を選ぶことが大切です。
ぜひ本記事のそれぞれの仕事内容や給料面、向いている人の特徴などを参考に、自分にあった仕事を見つけてみてください。