介護福祉士は介護職における唯一の国家資格であり、取得することで転職活動を有利になることに加え、年収アップにもつながる資格です。
介護福祉士受験のためには介護現場における実務経験が求められますが、一定の条件を満たせば看護助手も国家試験に受験可能です。
本記事では、看護助手が介護福祉士の受験資格になるための条件や、資格取得のメリットについて詳しく解説していきます。
また、看護助手が介護福祉士を取得した後のキャリアについても、いくつか例を紹介しているので参考にしてください。
介護福祉士とは?
介護福祉士とは、介護を必要とする方に対して日常生活で必要な支援をする際の専門的な知識やスキルを有していることを証明する国家資格です。
以下の見出しでは、介護福祉士になるために必要なことや介護福祉士国家試験の受験資格、看護助手との違いについて解説します。
介護福祉士を目指している方にとって必見の内容になっているので、ぜひご覧ください。
介護福祉士になるには
介護福祉士になるには、受験資格を満たした上で国家試験に合格し、公益財団法人 社会福祉振興・試験センターに資格登録することで介護福祉士として働くことが可能です。
介護福祉士の国家試験は、毎年1月末に行われており、以下2つの条件を満たすことで合格できます。
- 問題の総得点の60%程度を基準に、問題の難易度で補正した点数以上の得点がある
- 上記条件を満たした者のうち、試験科目11科目群すべてにおいて得点がある
また、2026年に行われる第38回の国家試験からは「パート合格制度」の導入が検討されており、試験の科目を複数年に分けて合格する場合でも、資格取得が可能になることが予想されます。
参照:厚生労働省「介護福祉士国家試験パート合格の導入に関する検討会」
介護福祉士の受験資格
介護福祉士になるために必要な受験資格を取得するルートは、主に以下の4つに分かれます。
- 福祉系の専門学校や大学などを経由する養成施設ルート
- 未経験無資格からはじめる実務経験ルート
- 介護を学べる高校を卒業する福祉系高校ルート
- インドネシア、フィリピン、ベトナムの方が対象のEPAルート
看護助手から介護福祉士を目指す場合は、実務経験ルートに該当する方が多いでしょう。具体的には、看護助手として現場で実務経験(3年以上)を積みながら、介護福祉士実務者研修を修了しなければいけません。
介護福祉士と看護助手の違い
介護福祉士と看護助手の違いについて、以下の表にまとめました。
項目 | 介護福祉士 | 看護助手 |
---|---|---|
主な仕事内容 | 介護サービスを利用する方の日常生活全般の支援 | 看護師のサポート業務(患者への支援や医療器具の洗浄など) |
対象者 | 介護を必要とする高齢者や障害者 | 病院に入院している患者 |
働く場所 | 高齢者施設や障害者施設 | 病院やクリニックなどの医療機関 |
平均年収 | 4,010,200円 | 3,183,600円 |
参照:e-Stat「賃金構造基本統計調査 令和5年賃金構造基本統計調査 一般労働者職種」
また国家資格である介護福祉士は、看護助手に比べると80万近く平均年収が高く、待遇面での差があることもわかります。
看護助手の経験は介護福祉士の受験資格になるのか?
介護福祉士になるためには、介護の実務経験が必要ですが、看護助手の経験は仕事内容によって実務経験に該当しないケースもあります。
看護助手の経験が、実務経験に該当するかしないかは、以下のような仕事内容の違いによって異なります。
介護業務の仕事がメインの場合 | 実務経験に該当する |
---|---|
環境整備の仕事がメインの場合 | 実務経験に該当しない |
看護助手から介護福祉士を目指そうと考えている方は、看護助手として働く職場の仕事内容を事前に確認しておくことが大切です。
それぞれの仕事内容について、より具体的な内容を見ていきましょう。
介護業務がメインの看護助手の経験は受験資格になる
看護助手として働いていても、以下のような介護業務がメインであれば、介護福祉士の受験資格に必要な実務経験に該当します。
- 排泄介助
- 入浴介助
- 食事介助
- 移乗介助
- 更衣介助
看護助手は基本的に看護師のサポート業務がメインで、看護師の指示によって仕事をしますが、上記のような介護業務を行っているのであれば実務経験になるので問題ありません。
参照:公益財団法人 社会福祉振興・試験センター「介護福祉士国家試験 受験資格」
派遣社員やパートでも受験資格になる
実務経験に該当するかどうかについては、雇用形態は関係ありません。
たとえ、派遣社員やパートの方でも、仕事内容が介護業務メインであれば、介護福祉士国家試験に必要な実務経験に該当します。
ただし、実務経験3年といっても、以下の条件を満たす必要がある点に注意しましょう。
- 就業期間1,095日以上
- 従事日数540日以上
従事日数に関しては、少なくても週に3〜4日以上の出勤をしないと3年で実務経験を満たせない計算になります。
環境整備がメインの看護助手の場合は受験資格にならない
看護助手として働いていても、以下のような環境整備がメインの場合は、介護福祉士国家試験に必要な実務経験に該当しない可能性があります。
- 医療器具の洗浄
- 清掃や物品補充
- 書類の整理
介護業務がメインで、サブとして上記のような仕事をしている場合は問題ありません。
しかし、介護業務がほとんどなく環境整備がメインの場合は、職場に介護福祉士を受験しようと考えていることを伝えておいたほうがいいでしょう。
介護福祉士国家試験の受験に必要な実務経験証明書は職場が発行してくれるため、早めに仕事内容を確認して、介護福祉士国家試験の実務経験に該当しない場合は、転職を考えたほうがいいかもしれません。
看護助手から介護福祉士になるために必要なもの
これまでの内容をまとめると、看護助手から介護福祉士になるためには、以下2つの条件を満たす必要があります。
- 実務者研修の修了
- 3年以上の実務経験
それぞれの条件について、より具体的な内容を解説します。
実務者研修の修了
実務経験を積みながら介護福祉士国家試験を目指す方の多くは、実務者研修の資格を取得するのが一般的です。
実務者研修とは、さまざまな利用者に対応できる介護スキルを習得するための資格です。研修時間は450時間で、資格取得までにおよそ6ヶ月程度かかります。
介護福祉士の資格を取得するまでに研修を修了しなければいけないため、看護助手として働きながら資格取得を目指す場合は、早めに申し込んで余裕を持って研修を受講しましょう。
そのほか少数派ではありますが、実務者研修の修了以外にも、以下2つの研修を修了することで介護福祉士の国家試験を受けられます。
- 介護職員基礎研修
- 喀痰吸引等研修(3号研修を除く)
すでに上記の資格を取得している方は、実務者研修を受ける必要がないので、事前に確認しておきましょう。
3年以上の実務経験
無資格未経験から看護助手をはじめて介護福祉士を目指す場合は、実務者研修の終了だけでなく、介護業務の実務経験が3年以上必要です。
具体的には、以下2つの条件を満たす必要があります。
- 従業期間1,095日以上
- 従事日数540日以上
ただし看護助手の場合は、実務経験の業務内容に注意しましょう。
看護助手が介護福祉士資格を取得するメリット
看護助手が介護福祉士資格を取得すると、以下のようなメリットがあります。
それぞれの具体的な内容を見ていきましょう。
専門性の高いスキルが身につく
介護福祉士を目指す過程で、介護に関する以下のような専門スキルが身につきます。
- 基本的な介護技術
- 認知症ケアのスキル
- 医療的ケアの実践スキル
- 介護保険の基礎知識
- 介助が難しい方の対応スキル
また他の人に対して、自分は介護のスペシャリストであることの証明にもなるため、利用者やその家族、職場の仲間や上司などから信頼にもつながります。
収入アップにつながる
看護助手が介護福祉士の資格を取得すると、まず基本給のベースアップにつながります。さらに、資格手当が出る職場であれば、年収アップが期待できます。
さらに、介護福祉士として介護職に転職すれば、さらなる収入アップの効果もあるでしょう。
では看護助手と介護福祉士では、具体的にどれくらいの収入に差があるのでしょうか。詳しい内容を見ていきましょう。
看護助手と介護福祉士の収入の違い
賃金構造基本統計調査によると、看護助手の平均年収は320万円ほどに対して、介護福祉士の平均年収は400万円ほどです。
やはり国家資格である介護福祉士の収入アップ効果は高く、およそ80万円も年収が上がります。
また、看護助手が介護福祉士として働くと、資格取得により、以下のような収入アップにつながります。
保有資格 | 平均月給 |
---|---|
資格なし | 268,680円 |
介護職員初任者研修 | 300,240円 |
実務者研修 | 302,430円 |
介護福祉士 | 331,080円 |
参照:厚生労働省「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」
看護助手の収入に不満がある場合は、介護福祉士の資格を取得したり、介護職として働ける職場へ転職したりするといいでしょう。
転職活動が有利になる
看護助手が介護福祉士の資格を取得すると、転職活動での採用率アップが期待できます。
職場としても、国家資格である介護福祉士を持っている方を採用したいと考えるのは当然です。さらに、看護助手から介護業界への転職をする際にも、介護福祉士の資格は大きな武器となります。
介護事業所の場合は、介護福祉士の資格保有者が多いと、介護報酬の加算率がアップするため会社としても介護福祉士を多く採用したいと思うでしょう。
正社員になりやすくなる
介護福祉士の資格を取得することで、正社員になりやすというメリットがあります。
一方で資格がない場合は、採用されたとしても試用期間はパート契約になる可能性があるでしょう。
介護福祉士の資格を持っているということは、3年以上介護業務の経験があり、一定以上の知識やスキルがあると判断されます。
会社としても、介護福祉士の資格を持っていれば即戦力として働いてくれるだろうという期待を持てますし、資格取得のために努力する向上心も評価につながります。
雇用形態や給与面など、少しでもいい条件で採用してもらいのであれば、介護福祉士の資格取得は大きなプラス要素となるでしょう。
看護助手が介護福祉士を取得した後のキャリア
看護助手が介護福祉士を取得した後は、以下のようなキャリアがおすすめです。
それぞれのキャリアを築くための、具体的な方法について見ていきましょう。
看護助手としての専門性を高める
看護助手の仕事が好きな方の場合は、そのまま看護助手を続けて専門性を高めるのがおすすめです。
専門性を高めながら、職場に長く貢献できれば、その分収入も上がっていくでしょうし、看護師から頼りになれる存在になれるでしょう。
また看護助手には、以下のような魅力があり、長く働くことでやりがいを感じられます。
- 患者さんから感謝される
- 医療的ケアに間接的に貢献できる
- 看護師から頼りにされる
看護助手のリーダーを目指す
看護助手として働き続け、介護福祉士を取得できたのであれば、リーダーを目指すのも魅力あるキャリアのひとつです。
以下のような方は看護助手のリーダーに向いているため、自分がリーダーできる不安な方は参考にしてください。
- 看護助手の仕事が好き
- チームをまとめるのが得意である
- 常に向上心を持って仕事をしている
- 他人に教えることに喜びを感じる
- コミュニケーション能力が高い
看護助手として看護師をサポートするだけでなく、看護助手の責任者として他職種と連携し、医療ケアの向上や患者の満足度アップを図りたいという思いがある方もリーダーとしての素質があります。
看護助手として長く働き続けたいという方は、リーダー職を目指すのもいいのではないでしょうか。
介護職へ転職する
看護助手として患者さんに介護業務を行ってきた経験と、介護福祉士の資格取得までに身につけた専門スキルを武器に、介護職に転職するのもおすすめのキャリアと言えます。
医療機関がメインの看護助手から、高齢者介護がメインの介護職に転職することで、以下のようなメリットを得られるでしょう。
- 収入アップが期待できる
- キャリアの幅が広がる
- 施設の中心的役割を担える
- 経験を活かし即戦力として働ける
- 心機一転新しい気持ちで働ける
より介護福祉士の資格取得のメリットを活かしたいのであれば、看護助手よりも介護職としての働き方が合っているかもしれません。
ケアマネジャーを目指す
介護福祉士の資格を取得したのであれば、その先のケアマネジャーを目指すのもいいでしょう。
ケアマネジャーは、介護サービスを利用する方のケアプランを作成し、日常生活に必要な支援を計画することで、一人ひとりの日常生活を支えていく役割を担っています。
ケアマネジャーになればキャリアの幅が広がるだけでなく、資格取得による収入アップの効果も期待できるでしょう。
介護支援専門員実務研修受講試験は、介護福祉士の資格取得後に、5年間の介護に関する実務経験を積むことで受験可能になります。そのため、ケアマネジャーを目指す際はまずは介護福祉士としての経験を地道に積んでいきましょう。
そのほかの職種を目指す
そのほかにも、看護助手が介護福祉士の資格を取得することで、以下のようなキャリアプランを立てられます。
- 介護リーダー
- 生活相談員
- 施設の管理職
- エリアマネージャー
- 看護師
上記のような職種は、主に介護業界への転職によるキャリアの例です。
キャリアアップは決して簡単ではありませんが、スキルアップしたい、経験を積みたい、収入を上げたいといった思いがあるのであれば、積極的に上位の職種に挑戦しましょう。
看護助手から介護福祉士になる方法まとめ
看護助手から介護福祉士になるには、実務者研修を修了した上で、3年以上の介護に関する実務経験が必要です。
看護助手が介護福祉士の資格を取得すれば、収入増加をはじめとしたキャリアアップにつながります。
介護福祉士の資格は、看護助手の主な活躍の場である医療業界から介護業界へ転職する際にも、採用に有利になりやすいといったメリットもあります。
看護助手としてのキャリアの幅を広げたい方や、今もよりも収入をアップさせたい方は、積極的に介護福祉士の資格取得に挑戦しましょう。