介護職員初任者研修は介護職として働くうえで基本的な知識とスキルを身に着けられる研修であり、介護業務を行う看護助手にとっても重要な資格のひとつです。
資格がなくても看護助手として働くことは出来ますが、資格を取得することで専門性を磨き、スキルアップやキャリアアップ、転職活動を有利に運べるようになります。
本記事では、看護助手が最初に取得すべき資格である「介護職員初任者研修」を取得するメリットや活かし方、資格取得の難易度などを解説していきます。
介護職員初任者研修とは?
介護職員初任者研修とは、介護職の基礎知識とスキルを学べる資格です。
資格取得は一見大変そうなイメージですが、介護職員初任者研修は看護助手として働きながらでも取得を目指すことが可能です。
焦らず自分のペースで資格取得を目指しましょう。
介護職員初任者研修の資格取得のルートや費用、取得までの必要な期間の目安などを解説していきます。
介護の基礎を学べる資格
前述の通り、介護職員初任者研修は介護の基礎を学べる資格で、以下のようなカリキュラムで構成されています。
- 介護の基本
- 介護における尊厳の保持・自立支援
- 介護・福祉サービスの理解と医療の連携
- 介護におけるコミュニケーション技術
- 老化や認知症、障害の理解
- こころとからだのしくみと生活支援技術
老化や認知症といった、高齢者介護における介護職向けの研修内容ですが、高齢者が多い病院で働く看護助手の方にも役立つ資格です。
介護のおけるコミュニケーション技術も学べるため、病院での患者とのやり取りで活かせるでしょう。
資格を取得するにはスクール受講が必須
介護職員初任者研修の資格を取得するには、研修を開講しているスクールに申し込み受講することが必須です。
研修内容は座学と実技で構成されており、通信と通学を組み合わせたカリキュラムになっています。
カリキュラムに介護スキルを学ぶための実技も含まれているため、介護職員初任者研修の資格を取得するためには、スクールに通うことが必要と言えるでしょう。
資格取得費用の目安
介護職員初任者研修の資格取得費用は、スクールによって異なりますが、5万円〜8万円が相場とされています。
また、以下のような制度を利用すれば、介護職員初任者研修の資格を無料で取得できる可能性があります。
- 各スクールの特待生制度
- ハローワークの職業訓練制度
- 職場の資格取得支援制度
- 各自治体の介護職員資格取得支援事業
これから転職を考えている人は受講スクールの特待生制度(スクールによって呼称は異なる)、現職の病院に勤めつつ資格取得を目指す場合は職場の資格取得支援制度を確認するといいでしょう。
資格取得に必要な期間の目安
介護職員初任者研修の資格取得に必要な期間の目安は、最短で1ヶ月、長くても半年ほどが目安となります。
研修時間は130時間で、それぞれのカリキュラムの時間は以下のとおりです。
カリキュラムの内容 | 時間 |
---|---|
職務の理解 | 6時間 |
介護における尊厳の保持・自立支援 | 9時間 |
介護の基本 | 6時間 |
介護・福祉サービスの理解と医療の連携 | 9時間 |
介護におけるコミュニケーション技術 | 6時間 |
老化の理解 | 6時間 |
認知症の理解 | 6時間 |
障害の理解 | 3時間 |
こころとからだのしくみと生活支援 | 75時間 |
講義の振り返り | 4時間 |
合計 | 130時間 |
参照:東京都福祉局「東京都居宅介護職員初任者研修事業実施要綱」
資格取得までの期間は、スクールの開講しているコースによって異なり、受講頻度による取得期間の目安は、以下のようになっています。
受講頻度 | 学習期間 |
---|---|
週4日以上 | 1ヶ月ほど |
週2日 | 2ヶ月ほど |
週1日 | 4ヶ月ほど |
月2回 | 半年ほど |
働きながら資格取得を目指す方も多いため、無理せず自分のペースに合ったコースを選びましょう。
介護職員初任者研修は看護助手の現場でどう活きるか
介護職員初任者研修で学ぶ以下のようなスキルは、看護助手の現場で大いに活かせるでしょう。
それぞれどのようなことが学べるか具体的な内容を見ていきましょう。
介護や障害の基礎知識が活かせる
介護職員初任者研修では、以下のような介護や障害に関する基本的な知識が身につきます。
- 介護職の職業倫理
- ケアに必要な視点
- リスクマネジメント
- 感染症への対策
- 障害福祉の歴史
- 障害の特性や支援のポイント
- 障害者家族への支援
看護助手として働く場合も、上記のような基礎理解は大切です。
病院に入院している患者の中にも、介護が必要な高齢者やさまざまな障害を持っている方がいます。
そのため、介護や障害の関する知識は非常に役立つでしょう。
身体介助のスキルが活かせる
介護職員初任者研修では、以下のような介護職に必要な身体介助のスキルを身につけられます。
- 食事介助
- 排泄介助
- 入浴介助
- 移乗介助
- 更衣介助
上記のようなスキルは看護助手の現場でも必要になり、さまざまな場面で活かせるでしょう。
高齢者とのコミュニケーションスキルが活かせる
介護職員初任者研修では、高齢者とのコミュニケーションスキルも取得できます。とくに認知症の方へのコミュニケーションスキルは、専門的な知識が求められます。
日本の高齢化率は、2023年の時点で29.1%と上昇傾向です。さらに、今後も高齢化率が上がり続けることが予想され、2030年には30%を超える見込みです。
そのため、看護助手が働く病院でも高齢者の増加は避けられず、認知症の患者を対応する場面も増えることが予想されます。
高齢化率が上がり続ける中で看護助手として活躍するためには、高齢者とのコミュニケーションスキルの習得は必須と言えるでしょう。
看護助手が介護職員初任者研修を取得するメリット
看護助手が介護職員初任者研修を取得することで、以下のようなメリットが得られます。
それぞれ具体的な内容を解説するので、看護助手で介護職員初任者研修の取得を検討している方は参考にしてください。
専門的な知識とスキルを身につけられる
無資格でも看護助手として働けますが、介護職員初任者研修を取得すれば、患者への身体介助やコミュニケーションなどの専門スキル、介護や障害に関する専門的な知識を身につけられます。
資格がなくても現場で働き続けることで、基本的なスキルは身についていくでしょう。しかし、現場だけで学ぶと基礎がわからないままの状態になる恐れがあり、スキルや知識を間違った解釈で捉えるかもしれません。
たとえば、なぜ自分はこの介助方法で行っているのか根拠がわからないと、ただ介助しているだけで仕事の質は上がらないでしょう。
給与アップにつながる
看護助手が介護職員初任者研修を取得することで、給与アップにつながるでしょう。具体的にいくらアップするかは、職場によって異なりますが、資格手当が出る場合はベースアップにより数千円のアップが期待できます。
厚生労働省のデータによると、介護職の場合は、介護職員初任者研修の資格がない方と資格取得した方で、以下のように給与が異なります。
保有資格 | 平均給与(月給) |
---|---|
資格なし | 268,680円 |
介護職員初任者研修 | 300,240円 |
参照:厚生労働省「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」
医療や福祉の現場では、資格取得が給与アップに直結するため、看護助手として少しでも給与を上げたい場合は、介護職員初任者研修をはじめとした資格取得を目指しましょう。
転職に有利になる
介護助手として転職を考えている場合は、介護職員初任者研修の資格を取得することで採用されやすくなります。
たとえば、同じ年齢で経験も同じくらいの方が同時に面接を受けた場合、資格があるほうが信頼性も高く採用率は上がるでしょう。
看護助手は転職によって給与アップできる仕事です。
そのため、効果的なキャリアアップを実現するためにも、介護職員初任者研修のような資格は取得しておいたほうがいいでしょう。
看護助手が介護職員初任者研修の次に取得するべき資格
介護職員初任者研修を取得した看護助手が、次に取得するべき資格は、以下の3つです。
介護福祉士とケアマネジャーに関しては、試験に合格する必要があるため、過去の合格率を参考に難易度を紹介します。
看護助手としてさらなるキャリアアップを図りたい方は、ここで紹介する資格を参考にして、自分のキャリアにあった資格取得を目指しましょう。
介護福祉士実務者研修
介護福祉士実務者研修は、介護福祉士を受験するために必要な資格であり、介護職員初任者研修では学べないより専門的な介護スキルや医療的ケアなどが学べます。
資格取得のためには、養成施設や民間スクール等で研修を受講し、カリキュラムを修了しなければいけません。
介護職員初任者研修を取得している方であれば、一部のカリキュラムが免除され、320時間の受講で済みます。
実務者研修の資格取得には、6ヶ月程度かかるため、資格取得を検討している方は早めに申し込みをして余裕を持ったスケジュールで学習を進めましょう。
介護福祉士
介護福祉士は、身体や精神に障害がある方に対して、日常生活を送るために必要な介護や支援を行う国家資格です。
ここではさらに、介護福祉士国家試験の受験資格の詳細や、介護福祉士国家試験の難易度や合格率も解説していきます。
介護福祉士国家試験の受験資格
看護助手から介護福祉士の国家試験を受験するには、以下のような受験資格を満たす必要があります。
- 実務経験3年以上+介護福祉士実務者研修の修了
- 実務経験3年以上+介護職員基礎研修と喀痰吸引等研修の修了
- 介護福祉士の養成施設に通い卒業
なお看護助手で介護福祉士会を目指す場合は、業務内容が受験資格の実務経験として認められるか確認しておくことが大切です。
患者への介護業務(排泄介助や入浴介助、移乗介助などの身体的介護)をメインに行っているのであれば問題ありません。
看護助手の方で介護福祉士を目指すのであれば、自分が行っている業務が実務経験として認められるか早めに確認しておきましょう。
参照:公益財団法人社会福祉振興・試験センター「介護福祉士国家試験 受験資格」
介護福祉士国家試験の難易度と合格率
介護福祉士国家試験の過去の合格率を振り返りながら、試験の難易度について見ていきましょう。
以下の表は、直近5年間の介護福祉士国家試験の受験者数と合格者数から合格率を算定したものです。
試験回(試験実施日時) | 合格率 | 合格者数 | 受験者数 |
---|---|---|---|
第36回(2024年1月28日) | 82.8% | 61,747人 | 74,595人 |
第35回(2023年1月29日) | 84.3% | 66,771人 | 79,151人 |
第34回(2022年1月30日) | 72.3% | 60,099人 | 83,082人 |
第33回(2021年1月31日) | 71.0% | 59,975人 | 84,483人 |
第32回(2020年1月26日) | 69.9% | 58,745人 | 84,032人 |
参照:厚生労働省「介護福祉士国家試験の受験者・合格者の推移」
介護福祉士国家試験の合格率は、ここ数年上昇傾向にあり、国家資格の中では取得しやすい資格と言えるでしょう。
パート合格制度が導入されれば、1回の試験ですべての科目に合格しなくても、複数年に分けてパートごとに合格することで資格を取得できます。
参照:厚生労働省「介護福祉士国家試験パート合格の導入に関する検討会」
ケアマネジャー
ケアマネジャーとは、主に介護事業所でご利用者のケアプランを作成したり、ご利用者と各種介護サービスをつなげたりして、ご利用者の生活を多面的にサポートする仕事です。
看護助手がケアマネジャーの資格を取得すると、以下のようなメリットがあります。
- 活躍の場が広がる
- 給与アップにつながる
- 事務作業がメインになる
ケアマネジャーは看護助手や介護職のように、身体介護や夜勤業務がないため、現場職よりも体力面で負担が軽減します。
ケアマネジャーの主な活躍場所は、介護事業所がメインです。
そのため、看護助手としてケアマネジャーを目指すのであれば、病院だけでなく介護施設での経験も積んでおいたほうがいいでしょう。
ケアマネジャーの受験資格
ケアマネジャー試験(介護支援専門員実務研修受講試験)を受験するには、以下いずれかの条件を満たさなければいけません。
- 規定の国家資格に基づく業務経験5年
- 相談援助業務経験5年
規定の国家資格には「介護福祉士」も含まれており、看護助手からケアマネジャーを目指すのであれば、介護福祉士の資格を取得し、5年の実務経験が必要になるということです。
ケアマネジャーの難易度と合格率
ケアマネジャー試験の過去の合格率を振り返りながら、試験の難易度について見ていきましょう。
以下の表は、直近5年間の介護支援専門員の受験者数と合格者数から合格率を算定したものです。
試験回(試験実施日時) | 合格率 | 合格者数 | 受験者数 |
---|---|---|---|
第26回(2023年10月8日) | 21.0% | 56,494人 | 11,844人 |
第25回(2022年10月9日) | 19.0% | 54,406人 | 10,328人 |
第24回(2021年10月10日) | 23.3% | 54,290人 | 12,662人 |
第23回(2020年10月11日) | 17.7% | 46,415人 | 8,200人 |
第22回(2019年10月13日) | 19.5% | 41,049人 | 8,018人 |
参照:厚生労働省「第26回介護支援専門員実務研修受講試験の実施状況について」
ケアマネジャー試験は介護福祉士に比べると合格率が低く、受験資格を得るまでに時間がかかるため受験者数も少ない傾向です。
看護助手からケアマネジャーを目指す場合は、焦らずコツコツ経験と学習を重ねて、長期的なキャリアアップの資格として捉えるといいでしょう。
看護助手におすすめの介護職員初任者研修まとめ
看護助手は無資格でも働くことは可能ですが、資格を取得することでさまざまなメリットがあります。
介護職員初任者研修の資格は、看護助手として給与アップしたい方やキャリアの幅を広げたい方におすすめです。
さらに介護職員初任者研修の資格取得を機に、その後の実務者研修や介護福祉士、ケアマネジャーなどの上位資格取得にもつながります。
看護助手としてだけでなく、医療や福祉の現場でキャリアアップを目指す方は、介護職員初任者研修をはじめとした資格取得をきっかけに、自分の可能性を広げていきましょう。